Prologue|名作が、再び語りはじめるとき
1973年、ヴィコ・マジストレッティの手によって生まれたソファ《MARALUNGA》。
ヘッドレストの高さを切り替える独自の機構と、包み込むようなフォルムによって、
世界のモダンデザイン史にその名を刻んだ名作です。
50年を経た今もなお、その佇まいは新鮮で、時代の空気とともに進化し続けています。
このたび、カッシーナ・イクスシーとPlan・Do・Seeによる特別企画として、〈MARALUNGA〉を舞台にした新たな表現の試みが実現しました。
“モノからコトへ、そしてコトからモノへ”。
互いの哲学が交差するこのプロジェクトは、カッシーナ本国のデザイン哲学を尊重しながら、
日本独自の素材と感性で“時間を重ねる豊かさ”を提案するものです。
Chapter 1|共鳴からはじまった対話
出会いの原点には、双方が抱く“憧れ”がありました。 Plan・Do・See代表・浅葉翔平氏が語る企業パーパスは「時代を超える憧れをつくり続ける」こと。 それは、目の前のお客様が感じる“心地よさ”を察知し、その瞬間ごとに最良の体験を届けるという哲学に基づいています。
一方、カッシーナ・イクスシーの代表・アレッシオ・ジャコメルは、 Plan・Do・Seeの空間に流れる「ゆとり」と「物語性」に強い共感を抱いていました。 「日本で初めて羽澤ガーデン(2000年代初頭)を訪れたとき、 空間を楽しむ文化が息づいていると感じた」と彼は語ります。
ライフスタイルを空間と雰囲気から形づくるPlan・Do・Seeと、
時を超えたデザインを通じて文化を伝えるカッシーナ・イクスシー。
両者は、人の暮らしや街に溶け込み、普遍的でありながら洗練された空間を生み出すという同じ理想を追求しています。
▲羽澤ガーデン玄関
▲羽澤ガーデンサロン
Chapter 2|MARALUNGAという象徴
本企画の焦点が、数ある名作の中で、なぜMARALUNGAだったのか。
それは、Cassinaというブランドの革新性と哲学を最も純粋なかたちで体現する存在だからです。
1970年代、ソファの常識を覆したスティール構造とモールドウレタンの採用。
そして、背もたれの高さを可変にするという画期的な発想。
ヴィコ・マジストレッティが求めたのは、「暖炉の前で過ごすような親密な場所」でした。
今回の特別企画では、その思想を損なうことなく、 Plan・Do・Seeの美意識を通し〈MARALUNGA〉の新たな魅力を引き出しています。
ジャコメルは語ります。
「マジストレッティの精神が宿るこのソファは、イタリア文化の象徴。
Plan・Do・Seeの感性が加わることで、使う人の感情やシーンに寄り添う新しい表情が生まれました。」

Chapter 3|素材が紡ぐもうひとつのストーリー
本企画で使用されたファブリックには、Plan・Do・Seeが選定した廃番生地やデッドストックなど、再利用可能な素材が用いられています。それはサステナブルという価値観を超え、「時間の痕跡」をもデザインとして捉える試みです。倉庫の片隅に輝きを潜めた美しい素材たちに目をつけ、新鮮で美しいカラーリング4色を選定しました。眠っている素材に新たな命を吹き込むことにチャレンジしています。
浅葉氏はこう語ります。
「古いものにしか出せない味わいや温度を大切にしてきた。それは建築でも、家具でも変わらない。」
MARALUNGAの構造美とPlan・Do・Seeの素材へのまなざし。その組み合わせは、Cassina本国のクラフツマンシップを継承しながら、“素材が語る時間の深さ”を感じさせるものとなりました。
▲今回の特別プロジェクトにって厳選された4つの張地が新たな命を吹き込み、〈MARALUNGA〉の新たな魅力を引き出している
Chapter 4|家具と人生をともにするということ
「家具は所有するものではなく、人生の伴走者である」。この考え方は、Plan・Do・Seeの空間づくりにも、Cassinaの家具づくりにも共通しています。張地を張り替えながら、暮らしの変化とともに使い続ける。外側は変わっても、内側の構造は変わらない。そこには“暮らしとともに成熟していく家具”という価値が息づいています。
ジャコメルは言います。
「完璧さよりも、時間を経たものに宿る美にこそ魅力がある。
使い込まれたソファの沈みや擦れこそが、愛情の証です。」
よいものを長く愛し続け、共に時を重ねていくということは、人が本質的にうれしいと感じる気持ちに通ずるのかもしれません。また訪れたい場所、また会いたい人と同じように、人の居心地の良さとは本能的であり、人生の時の重なりを経て、新たな魅力をまといながら、未来の暮らしに繋がっていくのです
Chapter 5|不完全の中に宿る美しさ
浅葉氏は語ります。
「街の面白さは、完璧ではない味わいの中にある。時代をまたいで積み重なった建物の違和感こそ、街の記憶をつくる。」
この考え方は、Cassinaが大切にしてきた“ヘリテージとモダンの共存”と深く響き合います。新しいデザインの中に、コルビュジエやマジストレッティの普遍性を組み合わせる。それがCassinaの「The Cassina Perspective」と呼ばれる哲学です。Plan・Do・Seeの作る空間もまた、歴史を刻んだ古い建物を再解釈し、街のストーリーと溶け込むことで、まるで前からそこに存在していたかのように馴染ませることを大切にしています。このプロジェクトは、そうした空間へのこだわりと価値観を伝えるための象徴的な取り組みといえます。
photo credits : Paola Pansini
Maralunga sofa designed by Vico Magistretti
▲The Cassina Perspectiveという哲学のもとCassina本国によって構成された空間。革新性、オーセンティシティ、技術力と熟練した職人技の組み合わせなど革新的なプロダクトとモダンなアイコンがともにスタイリングされています。
▲(左上から順に)登録有形文化財 旅館おちあいろう(伊豆)| 旧大阪市公館をリノベーションした ザ・ガーデンオリエンタル・大阪(大阪)|任天堂旧本社と安藤忠雄氏設計監修の建築が融合した 丸福樓(京都)| 江戸から続く名古屋最古の料亭 河文(名古屋)
Epilogue|時を超える憧れをつくり続けるために
このソファは、カッシーナ・イクスシーとPlan・Do・Seeによる特別企画として生まれました。それは限定モデルではなく、素材の再活用と創造的対話から生まれた一つの表現です。マジストレッティの思想を大切に受け継ぎながら、日本の感性が新たな視点を添えることで、〈MARALUNGA〉の魅力が改めて照らし出されています。この特別なソファが、多くのお客様の日々に寄り添い、暮らしの物語を彩ることを願っています。

